【FJ2022・インタビュー】 Fintech Japan 2022ピッチバトルで優勝したSiiibo証券、その軌跡と見据える未来(Fintech協会)

Siiibo証券株式会社 代表取締役CEO 小村さん

2022年7月に開催されたFintech Japan 2022。そのイベントの一プログラムとして行われたピッチバトルで、多くの応募による第一次予選、ならびに最終ノミネート6社を勝ち抜いて、優勝となったSiiibo証券。
今回の応募動機や評価されたポイント、今後の事業の展望などについて、お話をお伺いしました。

インタビュイー

小村 和輝 Kazuki Komura
Siiibo証券株式会社 代表取締役CEO

東京大学大学院工学系研究科修了。ドイツ証券株式会社にてトレーダーとして国内外の社債、 クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)、仕組債等のクレジット商品全般の取り扱いを経験。その 後、ブラックロック・ジャパン株式会社にて、国内の運用会社・公的金融機関に向けたリスク分析及び投資プロセスのアドバイザリー業務に従事した後、株式会社Siiibo(現Siiibo証券株式会社) を設立、代表取締役就任。

インタビュアー・ライター

野中 瑛里子 Eriko Nonaka
一般社団法人Fintech協会 事務局長
合同会社N.FIELD代表

2009年、三菱UFJ銀行入行。市場部門ALM部署にて大手法人運用デスクと自己勘定ファンド管理に従事。 2017年、SoftBank入社、Blockchain国際送金コンソーシアムのプロジェクト・マネージメントを約1年担った後、SoftBank Vision Fundの日本ローカライズ部隊でBizdevを担当。PayPay立上のほか、J.Score、OneTapBUYなどFintech事業の総合企画も行う。 2019年8月より現職。並行して、2020年1月にはスタートアップ向けバックオフィス・ファイナンス支援を行う合同会社N.FIELDを設立し代表を務める。NPO法人Startup Weekend理事。

Siiibo証券について

「自由、透明、公正な直接金融を創造する」をミッションに掲げ、社債に特化した日本唯一のネット証券であり、オンライン上で社債の発行・購入が可能なプラットフォーム「Siiibo」を運営。

伝統的な金融商品である社債は、発行条件や資金使途の設計柔軟性がありながら、投資家サ イドから見ても購入時に利率と償還期間が決まっており、シンプルで安定性が比較的高い商品。一方、発行体と投資家が一部に限定されてきたことから、Siiibo証券は、ネットを通じてその自由度、透明性、公正性を向上させ、商品としての普及を目指す。


Fintech Japan2022について

ー小村さんがSiiibo証券を起業しようと思われた背景をお伺いできますでしょうか。

学生時代に金融データを使ったデータマイニングを行った経験から就活ではトレーダーに絞って面接を受け、ドイツ証券に内定し、就職してみて少人数私募の面白みを感じ始めていました。

証券会社でも、仕組債、EB債は人気がありましたが、個人投資家がリテラシーギャップにより損をする場面を見ることもしばしばありました。その資金を複雑でリスクの高い商品に張るのであれば、成長の見込めるスタートアップに賭けた方が有意義であると考え、在籍時代から事業化を構想し始めました。金融のキャリアだけを考えればバイサイドや戦略コンサルティングへの転職でさらなる年収増も見越せましたが、もっと人々の幸せに対して手触り感のある仕事をしたいと考え、スタートアップを立ち上げることを決めました。

ー前職時代からこのアイデアに着想されていたのですね。今回、ピッチバトルに応募しようと思われたきっかけは何でしたでしょうか。

弊社は2021年2月からベンチャー会員としてFintech協会に参加させていただいております。今回のピッチバトルは、シリーズB調達からご参画いただいたDNXベンチャーズのキャピタリストで、FINOVATORSの一人でもある高岡美緒(たかおか・みお)氏による推薦でした。私もベンチャーデットの認知をもっと広めたいというニーズを持っていたので、お話を聞いて、スタートアップにリーチする良い機会になると考え応募を決めました。

ーなるほど、ありがとうございます。準備はどのように進められましたか。

1次選考は締め切りまでの時間がそれほどなかったため要点を絞ってフォームに記載しました。最終ピッチも、持ち時間が5分間と長くありませんでしたので、詰め込みすぎないようシンプルに資料をまとめました。金融領域事業者の特徴の一つでもありますが、法規制が絡む部分が多いのと、ビジネスモデル自体を伝えるためにある程度説明が必要だったので、説明口調が長くなりすぎないように、工夫しました。

ー今回はFintechに詳しい方々が審査員ですが、普段の資金調達などではさらにプレゼンに留意が必要そうですね。最終ピッチはいかがでしたでしょうか。

実は、審査員の方々とは以前から接点がありまして。FINOLABさんのイベントには過去出場した事がありますし、 AWSにおいてはユーザーとしてお世話になっています。皆さん鋭い視点で切り込んでこられましたが理解もお持ちで優しく、一方的に話すピッチ部分よりも、インタラクティブなQ&A部分の方がむしろ話しやすかったです。

ー今回、審査員に響いたのはどういったポイントでしたでしょうか。

昨今注目を集めているベンチャーデットという社会的意義のある領域に注力している点をご評価いただきました。案件も積み上げてきており、フィージビリティと社会的インパクトの両軸から今後にご期待いただけたものと考えています。ベンチャーデットの意義がもっと広く認知されてほしいという思いが伝えられてよ かったです。

ー前回のピッチバトルの優勝商品は賞金でしたが、今回はこのインタビューを含む、Forbes Japanでの記事化といった広告商品に設定していますが、いかがでしたでしょうか。

スタートアップは皆費用をかけてでも露出をしたいニーズを持っていると思うので、適切な設定だったと思います。サービスのターゲティングにもよると思いますが、メディアとしては他に、新聞、テレビの露出効果もいまだに高いと感じています。

2022年7月にIVS那覇でもベンチャーデットのトピックでパネル登壇させていただきましたが、イベント登壇はメディアからお問い合わせをいただくきっかけになる事を実感しています。投資家、エンドユーザー、採用候補者への認知を拡大したいフェーズ、特にシード、アーリー期のスタートアップは、露出のきっかけとしてイベント登壇をどんどん活用してみてください。

今後のビジョン

ーこれからに向けた事業のビジョンはありますでしょうか。

クライアントのカバー範囲の拡充は考えています。足元の顧客はミドル、レイタークラスが中心。彼らの成長に伴い、自ずと上場企業からもニーズがでてくると思っており、そこまでカバレッジを広げたいなと。その他にも、VC経済圏に入っていないSME系や創業からの経過年数が長く第二創業を志す企業もサポートしていきたいです。現状でも主幹事証券による支援や、(JPXの)グロースからプライムを目指す企業にはVCの支援がありますが、私たちにもご支援できる領域があると考えています。

ー対応範囲が広がっていくのですね。それに向けては体力が必要となりますが、資金調達は順調でいらっしゃいますね。

はい、2021年12月にはシリーズBで、DNXベンチャーズさん、千葉道場ファンドさん、Angel Bridgeさん等から5.5億円、累計10億円を調達しました。資金使途としては、サービスオプションの拡充をしていく予定です。

ー会社の拡大にあたり、どういった方と一緒に働きたいというペルソナはありますでしょうか。

弊社ではMissionとして「自由、透明、公正な直接金融を創造する」を掲げており、まずはこれに共感していただける事を重要視しています。Valuesはまだ社内向けにしか公開していませんが、考え方をご説明すると、弊社は金融事業者としてコンプライアンスを守る立場ながら、営利事業者でもありスタートアップとして社会のニーズに応え売上も立てていかなければならない中で、二項対立になった際、どちらをどんな理由で重視するかという判断基準について言語化を行っています。

採用ポジションについては、ビジネスサイドはある程度採用が進められてきましたが、エンジニアはフロントエンドもバックエンドも全方位募集中です。採用している言語は静的型付言語の一つですが、まだまだ精通している人が少ないある意味尖った技術スタックです。現在のCTOである松澤は、東京大学大学院工学系 研究科(鳥海研究室)修了後、BaaS(マネージドNoSQLデータベースサービス)の開発運用に従事した経験があり、金融業界ならではの様々な制約の中で、堅牢かつ柔軟性が高いシステム構築をリードできる優秀な人物。彼の下で、モダンな技術や金融技術に面白みを感じながら働ける人には向いていると思います。

ー小村さんが面接の際に聞かれていることはありますか。

面接は基本的に現場の担当者に任せていて、私は最後に会社の魅力を伝える立場になっています。カルチャーフィットとミッション共感をダブルチェックしている程度です。実は、弊社では、最終面接の前に必ず1DAY JOBというプロセスを設けていて、在職中の方でも時間を作ってご参加いただいています。架空の課題に対し、既存メンバーとコミュニケーションをとりながら、レポートなど成果物を出していただく選考です。書類や面接の短い時間だけでは測りきれない、実際にメンバーとしてご活躍いただけそうかという部分はそこで推し測れていますので、私の最終面談はライトに行っています。

現在は社員20名、業務委託を入れると30名程度。組織としては徐々に完成されてきていますが、ベースの思考力があり即戦力となってくださる方にさらに加わっていただけると良いなと思います。

ー最後に、これからFintech業界の方々と一緒にやっていきたいことは。

Fintechを盛り上げていきたいという気持ちが強くあります。金融領域で上場された事例はWealthNaviさんやFinatextさんなど先陣の方々が作ってくださってはいますがまだまだ少なく、自分たちもその一員になれればと思っています。金融業は業登録が絡んでくるため、その取得可能性や運営体力にベットしてくれるキャピタリストがいないとなかなか成長が難しい業種。その代わり、当たれば成長幅が大きく社会にも定着する、意義が大きい産業です。このやりがいのあるFintechという業界で引き続き頑張っていきたいと考えておりますので、業界に入ってきてくださる方、弊社に入ってきてくださる方、そして共に戦うプレイヤーの皆様と、引き続きご一緒できればと思います!

ーありがとうございました、引き続き応援しております!


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